2021-01-20
『近藤乾之助 謡う心、舞う心』(2005年/集英社刊)
定価4500円+税
『近藤乾之助 謡う心、舞う心』は、私の転機となった著作である。
2001年4月、はじめて能楽シテ方宝生流・近藤乾之助の舞台を観た
とき、私の人生が変わった、と言っても過言ではない。
能を観たのははじめてではなかったが、これほどのめり込んで舞台を
食い入るように観たのは、乾之助の能『盛久』がはじめてであった。
近藤乾之助の能を一番も漏らさず観ることを誓った。そして許しを得
て、聞き書きを始めた私は4年半の歳月をかけて本書を完成させた。
「能 ひとすじ 澄明な視点と緻密な解釈を経てつむぎだされる近藤乾之助
の『能』。宝生流現行曲181曲について、貴重な『能』哲学が披瀝さ
れた格調高き芸談。」本書の帯には、そう記されている。
2021-01-20
『近藤乾之助 謡う心、舞う心』表紙デザインについて
表紙デザインは、藤沢摩彌子が担当した。当初から思い入れがあったので、好きな絵を使わせていただいた。もちろん「能」にも関係のある絵だ。絵の作者は速水御舟。41歳で惜しまれつつ早逝した天才の19歳の折の傑作『錦木』。畳一枚ほどもある大きな絵は、清潔で気品ある名作である。
女性を思い詰めて恋がかなわなかった若い男性の悲恋。能『錦木』とテーマを同じくするこの名画は、東京・広尾にある山種美術館に所蔵されている。裏表紙にも、速水御舟の絵を使った。こちらは、かわいらしい『ひよこ図』。近藤乾之助が無類の鳥好きであったことを想い、裏表紙に用いることを希望した。東京国立近代美術館蔵である。